第三編 薔薇色の人生 
         第13話 ネクタイの始まりの頃

 前出のコーナーでネクタイの始まりは江戸末期から明治の始めと御話致しました。江戸幕府から明治政府へと変り、その結果丁髷が散切り頭に変り、街には鉄道馬車が走り、劇的な変化を遂げ始めた時、ネクタイに注目した人たちが出現した所まで話してまいりました。 ところで、明治時代にネクタイを作っていた人たちがいたはずです。この点はいろいろな文献を調べてみても出て来ません。華やかにスポットライトを浴びる陰で目立たない縁の下の力持ちである職人さんたちは、どんな人たちが作っていたのでしょうか。どこかで判らないかと心掛けていましたら、ふとした事から耳にしました。現在は、ネクタイの職人さんが輸入物が増えたためにどんどん減っています。今は無き、ネクタイの職人さんが、話して下さいました。その後、興味深い話がまだまだ伺えたであろうかと思うと残念でなりません。

 

御話によりますと明治初期にネクタイを作っていた人たちは足袋職人の人たちが多かったのだそうです。目の前を歩いている人の中、着物から洋服に変わった人が現れ、足袋を履いている人の中にネクタイを締めている人が混じってゆく様子を目の当たりにした時、足袋の作り方とネクタイの作り方が似ていると気付いた人がいたようです。つまり、生地に型紙を置き、型を生地に写し取り、生地を縫い、生地を裏返し、コテで形を整える。最後縫い付けて、仕上げして、出来上がり。プロセスは全く同じです。 そういう時、二種類の人がいますよね?もう足袋は駄目になる、ネクタイを作ろう!と言うマイナス思考の人と、そうだ!足袋とネクタイの作り方は似ている。ネクタイを作ってみよう、と言うプラス思考の人と。きっと後者の人に違いありません。またそう思いたいですね。どんな気分でネクタイを手掛け始めたかは今となっては、はっきりしませんが。

 また、現在はもう世界共通になってしまいましたが、ネクタイの型紙の置き方は実は日本人が考え出した物なのだそうです。成るべく生地の使う量が少なくて済む様に考え出した結果です。 とにかくヨーロッパではそれまで、相当無駄に、と言うか贅沢に生地を使っていたようです。もともと、ネクタイを締める人たちは恵まれた立場の人が使用していたでしょうから、コスト意識の必要も無かったのでしょう。横に日本人が考え出したと言う、現在の型紙の置き方を図示しておきます。この型紙で二本作ります。無駄がありませんね。

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